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口蓋裂に伴うことばの問題

早期(2歳頃まで)に口蓋裂の手術を受けた子どもたちの6〜7割は発音(構音)の練習を受けなくても、4〜5歳頃までに自然に正しい構音を身につけていきます。しかし、少数例ながら、「ことばが鼻に抜ける」とか「発音がはっきりしない」などことばに問題がみられることもあります。
 

【図1】 構音時の舌や鼻咽腔閉鎖運動(○の部分が鼻咽腔)

口蓋裂特有のことばの問題は、その成り立ちから、大きく2つに分けることができます。共鳴の異常と構音の異常です。共鳴の異常とは開鼻声、いわゆる鼻に抜けるような声のことで、主な原因は鼻咽腔閉鎖機能(図1)不全です。「バイバイ」が「マイマイ」、「デンワ」が「ネンワ」のように聞こえます。構音の異常とは、鼻咽腔閉鎖機能不全や口蓋瘻孔(ろうこう)によって、呼気が鼻に漏れ、構音に必要な口腔内圧を作ることができないため、音が歪んだり、誤った構音操作を習得したりすることをいいます。鼻咽腔閉鎖機能が良好でも、上顎の形態の問題や歯並びの異常、舌操作の誤りなどによっても構音の障害が出る場合があります。表1に口蓋裂にみられることばの問題についておおまかにまとめました。
 

【表1】 口蓋裂にみられることばの問題

共鳴の異常(開鼻声)
 
   


 

鼻咽腔閉鎖機能不全に関連するもの

呼気の鼻漏出による子音の歪み、省略など
 
構音の異常

  声門破裂音、咽頭破裂音、咽(喉)頭摩擦音
 
    鼻咽腔閉鎖機能不全との関連が少ないもの 口蓋化構音、側音化構音、鼻咽腔構音

口蓋裂の異常構音を治すには、どの音がどのように異常なのかを正確に評価することが重要です。そのためには、異常構音の聴覚的な特徴と構音の仕方(構音の動態)を分析することが重要です。言語治療担当者はその評価に基づいて個人個人にあった言語プログラムを立案し治療を進めていきます。