お子様の「い・う列」の発音の問題は、おそらく「鼻咽腔構音」であると拝察致します。この場合、「い・う列」のどの音が「鼻咽腔構音」になっているのかによって経過が異なります。母音「い・う」とすべての「い・う列」の子音(つまり「き・し・ち・に・・・、く・す・つ・ぬ・・・」)であるのか、「い・う列」の子音だけなのか、あるいはそれ以外なのかによって訓練に必要な期間は違ってきます。それからお子様の年齢や精神発達の程度、そしてさらに重要な要因として鼻咽腔閉鎖機能の状態も大きく関与します。
鼻咽腔閉鎖機能が良好な場合、早ければ2〜3ヶ月で治ることもありますが、経験的にはもう少しかかることが多いと思われます。私が経験した、母音を含めた「い・う列」すべてが鼻咽腔構音の5歳児さんの場合、月3回のSTで10ヶ月かかりました。一般に、年齢が高くなるに従って、ST期間は長くなる傾向がありますので、お子様の場合にはさらにもう少し時間が必要と思います。鼻咽腔構音は、人によって経過は様々ですが、治せる発音ですので、適切なSTを根気強く受けられることをおすすめします。
ダウン症で舌が大きい場合、口腔側の空気の流れが閉鎖されやすく、逆に鼻に空気が流れやすくなります。これが鼻咽腔構音や呼気の鼻漏れを助長している場合も少なくありません。年単位の時間が必要かもしれませんが、子どもさんの発音が少しずつ明瞭になっていくプロセスを大切にしてあげてください。
[101] 木戸直博 (2010/10/01 Fri 11:50)