口唇裂の手術の際、粘膜、筋肉、(皮下組織)、皮膚と3〜4層で縫合しますので、傷が全層で裂けることはまずありません。ところが顎裂骨移植の場合、1ミリ程度の厚みの粘骨膜を1層で縫合するだけです。しかも骨をしっかり移植しているときは結構緊満して張力がかかります。ちょっとした刺激で傷が裂けます。ほかの場所なら裂けてもまたくっついてくれればいいのですが骨移植部は裂けると骨がこぼれ落ちたり、そこから移植骨へ感染を起こしたりするので厄介です。
机の角などに太ももをぶつけると内出血をおこすことがあっても多くの場合打撲で済みます。ところがおでこをぶつけると結構裂けて血がでます。歯ぐきはおでこと同じで硬いもの同士がぶつかると間に入った皮膚や粘膜は結構裂けてしまいます。歯ぐき付近の縫合部も同じです。
骨移植前にその周囲の乳歯は抜いてもらうことがあります。縫合部付近に歯がないと硬いものをかみ切ったりするとき直接縫い目に硬いものが当たることになるので特に要注意です。おかき、おせんべい、硬い板チョコ、硬い前歯で噛み切るものなどは要注意です。
ただ傷はおおむね3週間もすれば開きにくくなりますので、そこからは当院では食事制限をしていません。それまでは硬い食べ物以外にゴマ、ふりかけなど縫い目の隙間に入るものは厳禁としています。またパンや最中など硬口蓋にへばりつく食べ物は舌で口蓋をこそげながら食事を後ろに運びますので基本中止です(歯ぐきより後ろに縫合線が来ない場合はあまり関係ないのですが、個々に食事をそこまで区別できないので入院中は一律パンや類似品は中止としています)。
あとは糸のついている部分の歯ブラシでの歯磨きは中止しています。当院では吸収糸で縫合していますが3週目ごろに抜ける糸は抜いています。
参考になりましたでしょうか。
[267] 形成外科 木村 (2016/09/03 Sat 13:29)