ご連絡ありがとうございます。
手術や治療の方針は必ずしも一通りではありませんので色んな考えのもと、色んな仕方があると思います。そのため我々の方法もその一つとしてお考えください。
3歳になって粘膜下口蓋裂に気づかれる場合、ほとんどが不明瞭な構音を指摘されて気づかれます。その時には軟口蓋を動かさずにしゃべる癖を多かれ少なかれ身につけているため術後もなかなか動かしてくれないことが多いものです。すでに幼稚園などに通っているとコミュニケーションがとれず、本人も親御さんもイライラを募らせていきます。
そのような場合我々は小学校上がるまでに構音を習得することを目標に口蓋形成術後1,2か月で軟口蓋を持ち上げる装置(PLP)を作成し、軟口蓋を持ち上げ鼻に空気が極力抜けない状況を作り、それから構音訓練を開始しています。鼻咽腔閉鎖させないと多くの構音は訓練してもなかなか改善していきません。装置をつけていると軟口蓋を持ち上げる癖がつき、はずしても挙上が維持されるようになります。
挙上装置をつけてもうしろまでまだ届かない場合や動きが改善しない場合は二次手術の適応になりますが、それでも咽頭弁は我々の間では最後の手段という位置づけです。最初がファーラー法ならプッシュバックさせてみるのも可能と思われますし、軟口蓋の動きはよくなったが後ろまで遠い(深咽頭の)場合はのどの後ろの壁を出っ張らせる手術も適応となります。咽頭弁をする場合は咽頭側壁の壁がよく動くようにBulb付加PLPを用いて訓練をします。側壁が動けば動くほど咽頭弁の幅が少なくて済むからです。
今年の口蓋裂学会で澤木先生が優秀ポスター賞をいただきましたが、これもPLPを使った治療の紹介と治療のなかでのPLPの位置づけを発表したものです。
ふう母さんのメールでは後ろに軟口蓋が届いていないのはわかりますが動きが悪くて届いていないのか距離的に届いていないのかはわかりかねます。ですので咽頭弁がダメとは言えないのですが、潜在的に動く能力があり、動けば届くのであれば、咽頭弁はできたら避けたい手術です。
PLPを日常的に使用している施設はあまり多くはありません。信州、関西、我々の地域以外ではあまり使われていないかもしれません。
かえって迷わせてしまうことになれば申し訳ございません。
[222] 形成外科 木村得尚 (2014/09/15 Mon 16:04)