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出生後すぐに診断してもらえなかったとのことですから、軽微な痕跡唇裂なのでしょう。
見ていないので何とも言えないのですが、一般的に唇裂で大きくわれている場合、最初の手術で9割ぐらいが治り、その後成長を見ながら必要に応じて相談しながら修正を追加していきましょう、とお話しています。痕跡唇裂は、おおむねその9割が治ったぐらいと同程度とみなされ、急ぐ必要はないのでゆっくり考えていきましょう、ということになるのだと想定されます。
手術の傷跡は線維組織そのものですから、周りの健常組織の成長より成長が悪くなります。ですので手術直後にきれいで左右対称にできても成長の過程で左右差の出てくることがあります。そこで、まとめて成長が終わった高校生ごろに治しましょう、小学校入る前に治しましょう、という話が出てきます。左右差が出たらすぐに治しましょう、という話にはあまりなりません。痕跡唇裂の場合、唇裂治療の流れに途中参加すると考えれば、これまでの先生から聞かれた話も根拠のあるはなしといえます。
直径1、2ミリのほくろがあったとして多くの親御さんはあまり急いで手術する必要性を感じたりしません。それはほくろというものを見慣れているからであり、ある程度あってもいいよね、というコンセンサスが社会にあるからです。ところが副耳や痕跡唇裂などは見慣れていないため、親御さんは、早く治療しなきゃ、という治療願望でいっぱいになってしまうようです。医療従事者は日常的に唇裂や副耳を見慣れており、急ぐ必要性がない場合は待つようにお話しすると思います。
唇裂手術の修正も途中からは本人がしたくないときに無理には修正しません。よくよく見ないとわからないレベルなら、本人がお友達に言われ気にし始めたときに治療を考えるでも遅くはありません。本人が気にならないなら一生そのままという選択枝もあります。
[291] 形成外科 木村得尚 (2017/10/23 Mon 13:20)